「……?」

 それは気のせいなどではなく、自分の体が収縮したせいらしい。
 両方の手を持ち上げて見ると、素肌だった部分はピンクゴールドの毛に覆われて、指も短くなっている。手の平にはぷるんと弾力のある肉球もついていた。

 鏡の前に飛んでいって全身を映してみると、完全な小動物の姿に変わっている。
 ふんわりとした毛並みは滑らかで、しっぽは体に対してボリューミー。金色の瞳の中の虹彩は縦長になり、人型のときよりも色が濃い。ふさ毛のある大きな耳の内側には、白い綿のような産毛が生えている。

 猫とも狐ともつかない、ふわふわの獣スタイル。この姿になるのは何年振りだろう。
 祖国では獣化しないよう常に気を張っていたし、自在に操れるものでもない。極度に弱っている今だからこそ、変身に至ったのだ。

 久しぶりの四つ足の感覚は、戸惑うかと思いきや、すぐに馴染んでくる。しばらく体の動きを確かめながら、このあとどうするかを考えた。

 この姿を見られるわけにはいかないが、どうせ訪ねてくる者はいないし、慌てずとも時間が経てば元の姿に戻れるだろう。
 けれど裏返してみれば、この小さな体ならば、目立たずに行動することもできるのではないだろうか。