「まぁ、私の大好きなお菓子ばかり! ありがとう、すごく嬉しいわ……!」
「フラン様の笑顔を拝見することができて、光栄です」

 微笑まれて、浮き立つような気持ちになる。喉の奥が詰まって、胸の奥に温かい光が灯ったかのようだ。

(アルベール、大好き……)

 この時間が少しでも長く続くようにと懸命に話題を探すも、残念ながら彼は任務に戻らねばならず、すぐに別れのときが訪れてしまう。

「フラン様。警備は万全にいたしますので、安心してお休みください。……それでは」

 離れていく背中を、せつない気持ちで見送った。
 しかし、彼のおかげですっかり心は癒やされて、気持ちは上向いている。

 心臓が、トクトクと元気よく高鳴っていた。

 フランの年齢は十九だが、婚姻先は決まっていない。縁談が持ち上がることがあっても、不吉な先祖返りは嫌だとすぐに相手から断られてしまうからだ。

 厄介者扱いされている自分が、婿をとって王家を継ぐことはありえない。王座に興味はないし、そちらのほうは、美しくしっかりした妹に任せればいい。

(私は、ただ……ありのままの自分を愛してくれる人と、幸せになりたい――)

 そしてその相手がアルベールであったなら、どんなにいいだろう。
 ほのかな恋心は、孤独なはずの夜を上書きし、明るい未来に心躍らせる時間となった。