クリムトが、タイミングを見計らって補佐としての業務に移る。

「今しがた、カーネリア公爵家ご当主から手紙をお預かりいたしました。陛下にすぐ目を通していただきたいとのことで」
「内容は?」
「おそらくは、先ほど陛下がフラン王女と過ごされたことを耳にし、次は自分の娘ともお願いしたい、というような内容かと」
「見せなくていい。捨てろ」
「かしこまりました」

 まったくどいつもこいつも――いまいましい思いで、荒い息をつく。議会の場ではのらりくらりと結論を先伸ばすのに、こういうときだけは地獄耳で動きが早い。
 シャムールの王女を同席させたのは、単なる情報収集のため。時間を有効に活用する、ただそれだけのことだというのに。

 会食を提案した張本人であるクリムトが、苦笑を浮かべながら話題をずらした。

「王女様とのご会食は、いかがでしたか?」
「どうもこうもない、時間の無駄だった。あれはとんだ阿呆か、張りぼての王女だな」
「期待した情報は得られなかったのでしょうか」
「ああ。聖獣の名称を出して確認したが、なにも知らないと」

 王女から裏を取りたかったのは、ライバル国である西の大国ウェスタニアの動きだ。