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 ――一方、城の執務室にて。

 帝国の最高権力者である皇帝ライズ・ド・ヴォルカノは、フランとの会食のあと、山のように積まれた書類の処理に戻っていた。
 寄せられる陳情や諸問題は湯水のように降って沸いて、暇な時間など一秒とて存在しない。仕事に忙殺されるのは今に始まったことではなく、慣れたものだ。

 精力的に仕事を片づけて、区切りのいいところでひと息をつく。彫像のように整った目元には、かすかに疲れが滲んでいた。

 ライズは元から他人に仕事を任せるよりは、自らこなしたほうが早いし確実と考えるワンマンタイプである。またその能力も十分で、卓越した手腕も持ち合わせていた。

 だが、広大な帝国の頂点に君臨するのはたったひとりで、集まってくる案件は膨大。猛将のごとき辣腕を振るうにも限界がある。
 暴君と呼ばれた亡き父の代から続く諸問題や、皇妃不在であることから分担すべき内政業務も、ライズひとりの手に委ねられている状態だ。

 そういう意味もあって、早くパートナーを決めるよう急かしてくる皇太后の言い分も一理ある。だが正直、色事を面倒と感じて放置してしまうのは性分だった。