(う、嘘でしょう!?)

 なぜ今なのか。頭の中は完全にパニック状態だ。
 変身はしっぽだけで収まるはずはない。その兆しとして頭のてっぺんもむずむずと疼いている。
 もうすぐ三角の大きな耳も髪の間から顔を出すだろう。見られれば、自分が珍しい獣人の先祖返りだということが知られてしまう。

「……どうやら、私は見くびられているようだな」

 一段と低くなった声が、場の空気を凍らせた。
 ライズは、黙ったままのフランの態度を反抗心によるものと誤解してしまったようだ。違うのにと思うが、唇が震えて言葉が出てこない。

 だが頭の片隅では耳の対処を講じなければと、使えそうなものを探して目を走らせ――とっさに膝の上に広げていたナプキンを頭に被って、テーブルに顔を伏せた。

 その瞬間、布の下でふたつの山がにょきっと盛り上がったのがわかる。ケモ耳が飛び出したのだ。

 膨らみを手で押さえつけ、目立たないよう頭を低くするしかない。その姿は間違いなく滑稽であったろうが、それ以外に方法は思いつかなかった。