ライズは、そんな視線は気にも留めずに言葉を続けた。

「今日は貴殿らにも披露したいことがあり呼んだのだ。ゆっくりしていってほしい」
「光栄でございます、陛下。それに、我が娘にも過分な温情をかけてくださっているようで……お心の広さには驚くばかりです」

 父のセリフに被せるように、母が裏声を出して会話に割り込んでいく。

「陛下! このような出来損ないの娘を差し出してしまい、申し訳ありませんでした。華もなく愚鈍な娘でご迷惑をおかけしたのではないでしょうか。もしチャンスをいただけるのであれば、第二王女のマーガレットをぜひおそばに置いてくださいませ。手塩にかけて育てた娘です。長女とは違い、このとおり器量もよく素直で……」

(お、お母様……?)

 フランは驚愕した。この国へ来ることを自分から名乗り出はしたが、それは家族を思ってのことだ。決死の覚悟で臨んだというのに、まさか母の口からこんな言葉が飛び出すなんて。
 ショックで呆然としていると、ライズが眉をひそめながら片手を上げ、制した。

「聞くに堪えない。やかましくて耳が腐りそうだ。どうしてもというのであれば、あとで謁見の申請を出しておいてくれ」