ハッと振り向けば、高貴さを漂わせたライズがこちらに向かって歩いてくる。途端に、胸に安心が広がった。

「こ、皇帝陛下……!?」
「えぇ? ど、どうして皇帝陛下がこちらに……?」
「ステキ……なんて格好いいの……」

 家族はそんな声を漏らしたが、フランの目に映るライズは、心なしか彼らに対して厳しい視線を向けているように見えた。
 近寄ってきたライズはフランの肩を抱き、シャムールの家族へと向き直る。三人が、息をのんだのがわかった。
 ライズは彼らを見下ろすように顎を上げ、言った。

「シャムールの王と王妃、そして第二王女よ。はるばる海を渡り、この帝国までよく来てくれた」

 純然たる上下関係。父たちは内心では不満に思っているはずだが、それでも皇帝に媚びを売ろうとしてか、にこやかな表情を浮かべ頭を低くする。

「はっ……このような素晴らしい場にご招待いただき、光栄に存じます」
「王妃のベラと申します。輝かしき皇帝陛下にご挨拶申し上げます」
「マーガレットと申します。お会いできて光栄です、皇帝陛下」

 父母にならってお辞儀をしたマーガレットは、頬を染めてちらちらとライズの顔をうかがい見ている。あまりの麗しさに見惚れているのだろう。