久しぶりに会ったというのに、浴びせられるのは冷たい言葉ばかりだ。
 揺れるフランの心境も知らず、父がもはや知れ渡っているらしい噂話を口にした。

「なんでも皇帝はすでに妃を決めているというではないか。妾にも選ばれないようなら、おまえは用済みとして国に帰されるのだろうな。まぁ仕方のないことだが」
「こんな穀潰しをいつまでも置いておく意味はありませんからね」

 穀潰し……またもきつい言葉にショックを受け、目の前が暗くなった。
 ライズがそんな風に思うはずがないことはわかっている。それよりも、シャムールにいたときにこそ、言葉どおりの扱いをされていたことを思い出したのだ。
 祖国での暮らしと、ライズが与えてくれた新しい生活。その落差は天と地ほどの違いがあった。初めは国に戻りたいと思っていたのに、今は彼のそばから離れたくない。帰りたいなどという気持ちは、もう微塵もない――。
 けれどもし花離宮が解散され、祖国に帰れと命令を受けたならば従わなくてはならない。そうして以前の生活に戻ったら、きっと苦しくて耐えられないだろう。
 とてつもなく悲しく、恐ろしく思えて、その場から逃げだしたくなっていた。すると、うしろから凛とした声がかかった。

「フラン。ここにいたんだな」