それを聞いたフランは、心をじんと温めてライズを見つめた。
 今さら遠い過去をどうこう言うつもりはない。目の前の人たちは、フランを見世物にしたり利用したりすることはないと、心から信じられる。
 皇太后も、息子たちの意見に従うつもりのようだ。

「まぁいいでしょう。それは抜きにしても、外交で大きな功績のあったシルビアさんの褒賞がひとつ、加えて先に話したもうひとつの一大発表の件もあるし……今年の建国祭は盛大なものになりそうね。招待客リストを至急作らせて、関係者を広く呼び集めなくては!」

 楽しみで仕方がないという風の皇太后を見て、フランは首を傾げた。

(シルビア様の褒賞……あの方はやっぱり、この国にとってとても大事な人なんだわ……。けれど、もうひとつの一大発表って……? いったいなにを発表されるのかしら?)

 すると、ふいに浮かんだ答えに、激しく心を揺さぶられた。動揺し、膝元に置いた手を強く握り込んでしまう。
 皇太后がこんなにも楽しみに計画することといえば、それは公の場でのライズの婚約宣言だ。もしかしたら、正妃とする女性を決めてしまったのかもしれない。そしてこの会話の流れからすると、お相手に選ばれるのは――。

 ついに覚悟していたそのときが来るのだろうか。切なくライズのほうに目をやれば、彼は黙って視線を伏せている。