見違えるように血色のよくなったルークが、晴れた空のような笑みを浮かべる。
 それから彼は、ライズと皇太后に支えられながら慎重に歩みを進めると、フランの前に膝をついた。忠誠を誓う騎士のごとくフランの右手をすくい上げると、感慨深げに甲に口づけを落とす。

「奇跡の乙女フラン。君は私の命の恩人だ。聖獣の姿の君も愛らしかったけれど、ようやく真の姿を見ることができて嬉しいよ。想像していたとおり、なんて美しいんだろう」

 美しいだなんてと照れていると、横からゴホンと低い咳払いがした。ライズが眉間に皺を寄せ、じろりと眺めている。ルークはなにやら苦笑しながら、握っていた手を離した。
 それからそれぞれが元いた席に落ち着いて、フランも空いている席に座るように言われて従った。
 ルークの今後について、ライズが丁寧に説明をしてくれる。フランにも聞く権利があると気を回してくれたのだろう。

 話によれば、帝国ではもうすぐ恒例行事である「建国祭」が催され、大きなパーティーが開かれる。そこでライズは、ルークに恩赦を与えるつもりだという。ルークの身に起きた「奇跡」を利用し、彼を復権させることは天の意志だと知らしめるのだと。
 力業ではあるが、一度下した裁決を覆し、そのことを信仰心の厚い国民に納得させるには、パフォーマンスが必要らしい。
 その立役者であるフランの紹介はどうするのかと皇太后に聞かれて、ライズは首を横に振った。