だが、ルークは口角を上げながらも、首を横に振る。

「本来なら、島流しにされ野垂れ死にしていたはずの身だよ。こんな出来損ないの身体だから、兄上は廃宮送りで済ませてくれたんだ。これ以上、望むことはない」

 それから遠くを見るように瞳を細め、ぽつりと呟く。

「ただ……この命が尽きる前に、母上と兄上にお会いしたかった……」

 もう諦めたようなセリフに、フランは言葉を失った。
 この部屋には読書が好きだという彼のため、書物が山のように積まれている。せめて好きなことをさせてあげようと、運び入れられたのだと思う。
 きっとライズは、弟である彼を死なせたくはないはずだ。それなのに、なぜ……。

「そういえば……君の人間になった姿を、見てみたいな。ダメかい?」

 驚いて、一瞬呼吸が止まる。少し考えてから、薄紫の瞳を見上げた。

「ライズ様が戻られてから……お返事させてください」

 わかったと頷く彼は朝方の星のようにはかなく見えて、その輝きを繋ぎ止めてあげたいと、切に願うのだった。