空位となった玉座を狙い、武力行使に出た者たちを、皇太子であったライズは力で抑え、粛正した。その厳格さに焦りを募らせた反ライズ派は、ついには弟皇子を担ぎ上げたのだ。

 実際のところ、ルークは名前だけを勝手に使われ、利用されたのだろう。学者肌で気の優しい彼が、謀反など起こすはずがない。
 けれども結果として旗印とされてしまったルークは凋落し、策謀の中で毒を含まされ、体を壊した。もともとの心臓の弱さも手伝い、いつ消えるともしれぬ命を、幽閉されて過ごすことになったのだ。

(殿下のご病気も、私が治して差し上げられたらいいのに……)

 一回試そうとはしたのだが、効果は見られなかった。生半可な力では及ばないほど、悪化しているのかもしれない。
 あるとき、フランは思い余って言った。

「明日にはライズ様が外交の用事から戻られる予定です。そうしたら謁見を願い出て、ルーク殿下がお城に戻れるよう、私からお願いしてみます」