フランが顔を出すと、ルークは嬉しそうに顔をほころばせ、青白かった頬に少しの赤みを戻す。

「お身体の具合はいかがですか、殿下」
「だいぶいいよ。君に会うと調子がよくなる。ありがとう」

 そばに寄っていくと、彼は横たわったまま腕を持ち上げ、フランの頭にそっと手を置いて、優しく撫でてくれる。
 だが明るい答えとは裏腹に、今日は一段と体が辛いようだ。指先から生命力の弱まりを感じて、胸が苦しくなる。
 微笑みを絶やさない彼だが、一度胸を押さえて苦しそうにしている場面に出くわしたこともあった。全身に汗を滲ませ、苦悶の表情を浮かべて――いつまたあのような発作が起きるのかと、フランは気が気でない。

(殿下のことが心配だわ……)

 ルークの身の上については、サリーに頼んで調べてもらっていた。
 サリーはフランと同時期に城に入ったため、それ以前の事情には詳しくなかったが、すぐに使用人仲間の伝手を使って情報を集めてきてくれる。
 その話に寄れば、ルークの処遇は、薄々予感していたとおり、数年前に起こった帝国の内紛、皇位継承争いに端を発しているという。