花離宮に戻ってきたフランは、本来与えられていた居室の使い勝手を久方ぶりに確かめ、お気に入りだった出窓を開けて、部屋の空気と気持ちを入れ替えた。
 皇妃の部屋より規模は小さくとも、身の丈に合っている気もするし不便は感じない。それに移動はサリーも一緒だから、その点では心強くもある。

「またこのお部屋に戻ってまいりましたね、フラン様」
「ごめんなさい。あなたにも迷惑をかけてしまって……」
「いえ、迷惑だなんて、そんなことはありません! どうかお気を落とさないでください。皇太后様のお考えがどうあろうとも、皇帝陛下のお気持ちが離れたわけではないと思います!」
「ええ、ありがとう……。これからはまた朝礼と夕礼にも出席して、こちらで学べることを学び、自分の価値を高めていこうと思うの。皇太后様にも認めていただけるよう、がんばらなくては」

 離宮にいる身で皇帝に面会するには、申請をして許可を受けねばならない。そうそう気軽に近づくことはできなくなったということだ。
 そもそも、それをすっとばして特別扱いされていた今までが奇跡のようなもの。落ち込んでいる暇があれば前向きに努力していこうと、気を取り直した。