「フラン……大丈夫なのか」

 ライズがフランのほうへ気遣うような視線を向けてきたので、懸命に口角を上げてみせた。心配をかけたくはないし、彼の立場を悪くするわけにはいかない。
 すると彼は眉間に深く皺を寄せつつ、「おまえがそう言うのなら」と言って頷いた。

 幸い離宮には、フランを目の敵にしていたカーネリアたちはもういない。獣人の能力に関する調査には求められたときに応じればいいし、大きな問題はないはずだと思い込もうとする。
 だが、同じ城の敷地内とはいえ、改めてライズとの距離ができるのは、やはりどうしたって寂しい気持ちになった。近頃は公務が立て込んでいて、ふらりと彼が部屋に立ち寄る機会も減り、会える時間が減ってきていたというのに。

(皇太后様は、シルビア姫という人を、ライズ様のお妃にと決めていらっしゃるのかもしれない……)

 サリーや数人の侍従に手伝ってもらいながら引っ越しの作業をする間、動揺を抑えることはできなかった。