「シルビア姫を……?」
「ええ。シルビア姫とは幼い頃に何度か交流を持ったこともありますし、あなたも懐かしいでしょう? 先方も年頃になり、品格も美しさも申し分のない淑女に成長していると思いますよ」

 どうやらライズとシルビアは幼馴染で、互いに知った仲であるらしい。
 それを聞いて、なぜだか胃のあたりがズンと重くなった気がした。下腹部をぎゅっと押されているようで、とても気持ちが悪い。
 黙って立ちすくんでいると、皇太后はライズとフランへ順々に視線を移しながら、念を押すように言う。

「そういうわけだから、くれぐれも失礼のないようにしなければなりません。シルビア姫は、皇妃候補であると同時に大事な賓客でもあります。皇妃の部屋は、返してもらいます。公平ではない状態を見せるのはよくありませんから」

 言い分としては、皇太后に理があると思う。結婚どころか婚約者でもないのに、皇妃の部屋を使わせてもらっていたこと自体、異例のことなのだ。