そうだ、アルベールはどうしているだろうか。彼も戦闘で負傷したものの、命に別状はなく、城に帰還したと聞いている。今頃は騎士団の詰め所で、怪我の手当てをしているはずだ。

 戦には負けてしまったが、騎士たちは民が避難する時間を稼ぎ、貢献した。けれど責任感の強いアルベールは、敗戦を自分の力不足のせいだと責めているかもしれない。
 彼の顔を見たい一心で立ち上がり、進路を定めて歩きだした。


 城の敷地内の一角にある、騎士団の詰め所。二階建ての石造りの本館に、武器庫や訓練場なども併設され、見た目にも力強く堅牢な造りになっている。

「フラン王女様、どうされましたか」

 入り口にいた騎士のひとりが、声をかけてきた。アルベールに会いにきたと告げると、団長なら二階にいると思うと教えてくれる。

 詰め所の中に入ると、看護の任務についた者たちが、せわしなく動き回っていた。怪我人の中には重傷を負った者もいるのだろうと思うと、心が痛む。

(アルベールは、大丈夫なのかしら……)

 気持ちが急いて、階段を上る足取りが早まった。
 きょろきょろと首を回しながら二階の廊下を進んでいくと、半開きに開け放たれた扉の向こうに、目的の人物の背中を見つけることができた。

「アルベ……」