「失礼しました。私は小日向鈴(こひなた りん)と申します。すずは私が拾った猫さんで……最初はあやかしだっていうのを知らずに拾ったのですが、私の家は古い家で厳しく、たまにすずが私の姿をとって、私の代わりをやってくれていたんです。一人の時間が出来た私は、そちらの店員さんたちがいるカフェに行けるようになって……」

と、舞弥と玉に目線をやる鈴。

その説明を聞いて、舞弥は考えた。

「……じゃあカフェに来てたのは鈴さんだったの?」

「はい。すずは、探さなきゃいけない人がいると言っていて、人の姿が必要なときは私の姿をすることを許していました。どういう理由とか、どういう人を探しているかは知りませんでしたけど……すずが悪いことをしたなら謝ります。すずを傷つけないでください!」

鈴は、力なく座り込む恰好のすずを抱きしめた。

化け猫――すずに余力がないことは、目に見えてわかった。

「お嬢様、違うのですよ。わたしのこれは、寿命、ですから……」

「すず……!」

「あの……すずさんが弱ってるの、寿命じゃないですよ」

口を挟んだ舞弥に、一同の視線が向かう。え? と驚きのものだ。

「舞弥? なんでそんなことがわかる?」

壱も、舞弥の言葉への驚きを隠さない。

「いや、視えてるの、傷が」

「傷?」

「表面に見える傷じゃなくて、内部にあるんだけど……それが膿んでるっていうか……たぶん、弱ってる原因……」

――舞弥の霊感は特殊だと壱も言っていたが、今この場において、その効力を発揮していた。

すずの内部にあるのは、傷。

どうしてそんなところに傷が出来たかまでは舞弥にはわからないが、それはひどい状態だった。

「おい猫、お前何か傷があるのか?」

化け猫、から、猫に呼び方が変わった。

問われたすずは、しまった、という顔をする。

「すずっ? 何があったの……」

鈴が心配して言えば、すずは困った顔になる。

「その……お嬢様に拾われる前なのですが……」

「うん」

「……瘴気(しょうき)を食べてしまったのです……」

――咄嗟にその言葉の意味を理解したのは、この場では壱だけだった。