「だめだ。そんな小さな姿しか取れないんだから、妖力が戻るまでこうしている。俺も隠形(おんぎょう)するから人間には気づかれない」

てくてくと歩く壱の腕の中で、玉はうつむいた。

ここまで探しに来てくれるどころか、総大将からも助けてくれた……。

「………ごめんなさい……」

「何に対してだ?」

壱の言葉は鋭かったが、声は優しかった。

「……勝手に出て行ったこと……」

「わかってるならいい。そもそも、『壱、舞弥、俺は幸せだったぞー』と叫ぶような場所を捨てるなんてありえないけどな」

「なっ、い、壱! それ舞弥に言うなよ!」

聞かれていたことが恥ずかしかった玉が噛みつき気味に壱の顔を仰ぎ見ると、壱はふっと笑った。

「そうだ、お前はこれから舞弥に謝らないといけないんだ。簡単に許してもらえると思うなよ?」

「う……舞弥、怒ってるか?」

「めちゃくちゃ怒ってた。窓から飛び出しかけたのを無理やり引き留めたからな」

「ひーっ、お、俺めちゃくちゃ謝るー!」

玉は今まで舞弥を怒らせたことはないが、舞弥は怒らせてはいけないタイプだと感じていた。

帰ったらどうしよう、まずは土下座か……と、玉がブツブツつぶやいているのを、壱は瞳を細めて見ていた。