「そうだが、どう関係する?」

「だって! 恋人はふたりでいたいもんだろう? 俺、お邪魔虫じゃないかっ。あっ、もちろん大将がいつ来るかわからなくて心配だから出てきたのもあるけどなっ、なっ?」

「………」

玉の言い分を聞いた壱は、空いている手で自分の顔を覆って、はーっと長く息を吐いた。

「えっ? 壱? お、怒ったか?」

「いや……そうだな、そういうことをちゃんと話していなかったのは俺の落ち度だ。でもな、玉、俺も舞弥も、玉と一緒に暮らしていくつもりでしかなかったぞ?」

壱が困った顔で言うので、玉も困った。

「……えっ? 俺、ふたりの邪魔だろう?」

「どこからそんな情報仕入れたんだ阿呆。言っただろう、お前は大事な家族だと。舞弥も加わって三人家族。これ以外に何がある」

「え……」

「わかったら帰るぞ。舞弥が飛び出しそうなのを抑えて来たんだ。早く帰らないと余計心配させてしまう」

どうやら舞弥も玉の家出に気づいていたようだ。

「……俺が帰って、舞弥は嫌な気持ちにはならないか?」

玉がぬぐい切れない心配から言うと、壱はにっこり笑った。

「怒るだろうな」

「おこ……」

「でもそれは、お前が大事だから怒る。どうでもいい奴に対して怒ってるほど、舞弥も暇じゃないと思うぞ」

「………」

玉は、小さな手をきゅっと握りしめた。

「壱翁、俺ももう帰っていいか?」

放置され気味だった榊の声に、玉は顔をあげた。

総大将を追い払うためとはいえ、壱はなんてお方を召喚しているのだ。

龍神様も、昔馴染みの要請だから来てくれたのだろうけど、玉みたいな子どものために夜中に動いてくれるなんて。

「ああ、夜中に呼び出してすまなかったな」

「お前に無茶振りされんのは通常運転だから慣れてるけど、久々過ぎてなんか笑える」

「そうか、笑ってろ。俺たちも帰ろう、玉」

「…………うん」

笑うというよりはにやにやしている榊は、すっと姿を消した。

玉は壱の腕に抱えられながら帰宅することになった。

「い、壱、俺歩けるぞ?」