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「舞弥ちゃんがおふたりさんと仲良くやってるから、じいさんも仲間に入れてもらえないかと思ってね。壱さんと玉くんがあやかしだっていうんなら、通報するところもないしね」

大家が淹れてくれたお茶を前に、壱と玉はバルコニーの露台で大家の方を向くように座っていた。

「俺は願ってもない話だけど……じーちゃんはいいのか? 妖怪とか怖くないのか?」

こてん、と玉が首を傾げると、大家ははっはと笑った。

「じいさんは人間の方が怖いね。うん、本当に……」

急に哀愁を背負った大家に年季を感じた壱と玉。

大家にも色々あったのだろう……。

「じゃあじーちゃん、改めてよろしく頼むぞ!」

「うん、こちらこそよろしく、玉くん」

にこにこと、たぬき姿の玉と大家が握手をしている。

壱は、そろそろ自分の話もしようとい住まいを正した。

「俺から、よろしいですか、大家殿」

「うん? なんだい」

今度は、大家と玉が同じ方向から壱を見てくる。

「俺を呪ったのは化け猫のあやかしなのです」

「お前化け猫に呪われてたの? 仮にもあやかし七翁が?」

「そこはツッコむところじゃない」

「あやかしななおう、ってなんだい?」

玉の言葉に大家が首を傾げる。

「この国のあやかしの祖だ。開闢(かいびゃく)のときから存在していて、あやかしの礎ってやつだな。壱は、『壱翁』って呼ばれるあやかし七翁のひとつなんだ」

「へえ、壱さん、すごいんだねえ」

「すごいのは俺ではないのですが……まあ、それで呪いも解かれたけど、俺は未だに俺を呪ったやつに狙われている」

「えっ、どういうことだっ?」

咄嗟に玉がファイティングポーズを取る。

続く大家の声も少し緊張していた。

「今も狙われているって、壱さんを呪い殺そうとしているとかかい?」