広い神社の庭でコロコロと遊ぶ小さなあやかしたちだった。

「みんな、榊さんが保護したあやかしさんたちなんだよ」

たぬき姿の壱や玉と同じくらいの大きさのあやかしや、それよりも小さなあやかしたちを見て舞弥は目を輝かせた。

舞弥は霊力があると言っても、怪我に敏感という特殊なタイプなので、妖怪や幽霊が悩むほど視えるわけではなかった。

それが今、小さなあやかしたちを視ることが出来ている。

小動物のような感覚で可愛く見えた。

「榊が庇護下に置いているあやかしだ。近寄っても危ないことはない」

後ろからやってきた壱が言う。

「こんな……こんなちっちゃな子たちが楽しそうに遊んでる……」

なぜだか感動してしまった舞弥は、手を震わせていた。

「そういえば舞弥ちゃんって前から視えたんだっけ?」

「うん……たくさんじゃないけど。美也ちゃんも?」

「私はなんていうか、急に視えるようになったクチで」

舞弥と美也が離していると、小さなあやかしたちが舞弥に気づいたようだ。

「おや? 知らない人間がいるぞ?」

「壱翁様の……ではないか?」

舞弥を見ながら、小さなあやかしたちが集まってひそひそ話をし始めた。

敵対心や警戒心は感じられない。

舞弥は挨拶をすることにした。

「あの、朝倉舞弥といいます。はじめまして」

「おお! やはり舞弥殿だ!」

「お初にお目にかかる」

「これから壱翁様にはたくさん世話になる予定だ!」

きゃっきゃと、小さなあやかしたちが喋った。

そこでふと舞弥は疑問に思った。

「そういえば美也ちゃんもさっき、壱のこと『いちおうさま』って呼んでたけど……」

この小さなあやかしたちも、今そう呼んでいた。

「俺のこの姿での呼び名だ」

「え」

名乗った壱に、毛玉から盛大な「え」が聞こえた。

続く声はぶるぶる震えている。

「壱……、『壱翁様』って……あやかし七翁(ななおう)の呼び名ではないか……?」

「俺のことだな」

「ぎゃーっ! まじかー!」

わーきゃーと玉が騒ぐので、舞弥は毛玉を掴んだ。

すると毛玉からたぬき姿に転じて、舞弥が抱える感じになった。