「…今日、最初で最後のデートのつもりだった」


千花さんが、何も言わずにそっとティッシュを差し出してくれた。


同時に、真ん中にバターが乗ったパンケーキもテーブルに置いてくれた。


言葉はなかった。


「…食べよっか。千花ちゃん特製の甘々パンケーキ。美味しいよ」


「…うん…」


涙を拭い、パンケーキを切り始める蒼空。


パンケーキに向かって小さくこぼした。


「怖かった」


口には運ばず、ただひと口大に切っていくだけ。


そんな蒼空を目の前にして、自分だけ食べる気にもなれず、私も同じようにパンケーキを切る。


「今日、花純が俺から離れていくと思ってた」


「そんなわけ―」


「花純に本当のことを話そうか、迷いに迷っててさ。でも、あまりにも花純が俺のこと知りたがるから、話すしかないかなーって」


…今朝、そんな葛藤があったんだ。


突然“デートしない?”と言ってきた、あの時、どんな気持ちで言ったんだろう。


私はあの時、こんなにも重たい覚悟を決めさせてしまったんだ。