「蒼空の家からおじいちゃん家まではどれくらい?」


「んー、25分ぐらいかなぁ」


「え…遠いね…」


そんなに歩けるかなぁ…。


「バスはないの?」


「昔はあったけど、利用者が減って倒産したらしい」


「へぇ…」


それが不便だとは思っていなそうな蒼空の顔を見ていると、なんだか世界の広さを知った気がする。


満員電車に乗って通学して、毎日毎日頭がパンパンになるまで勉強して、神経をすり減らす以外の世界もあるんだ。


息が詰まらないのびのびした空間もあるんだ。


「…今日、時間ある?」


「うん?あると思うけど」


別に、やることもないし…。


おじいちゃんおばあちゃんに挨拶だけして、部屋にこもるつもり。


「じゃーさ、森下さん家に荷物置いたら、二人でこの村の探索しようよ」


「いいの?蒼空はもう知り尽くしてるでしょ?」


「案内人は必要じゃん?」


「それもそっか。じゃあ、お願いします」