「森下、おはよう。元気?」


「なんだその挨拶。しかも私の存在無視しないでくれる?」


「ごめんごめん。でも、友坂を無視したんじゃなくて、森下しか視界に入らない脳になってるだけだよ」


「きも」


赤嶺くんと奏が息のあった掛け合いをしている。


朝から楽しい会話だなって思うけど、心の一部分は蒼空に吸い取られていて、心から楽しいって思うことはできない。


「おーい、森下ー?」


視界が赤嶺くんのドアップでいっぱいになった。


「あっ、ごめん、なに?」


心配そうに覗き込んでくれるけど、私の視線が蒼空の机に向いていることに気づくと少し顔をしかめる。


「今日の放課後空いてる?」


「えっ?」


「映画行かね?森下が好きだって言ってたドラマあったじゃん?あれの続編が公開されたらしいよ」


好きって言ったドラマ、覚えててくれたんだ。


しかも、続編のリサーチまでしてくれて…。


「ありがとう。行きたい。でも、部活はいいの?」