教室に入ると、蒼空が席に座ってジッとしていた。


昔の蒼空なら底抜けの明るさで友達をたくさん作っていただろうに、今の蒼空はそんな気配が少しもない。


誰とも話さず、ボーッと教室の様子を眺めている。


「桐谷くん、おはよう」


挨拶をした奏をチラッと横目で見た時に私の存在も視界に入ったのか、返事もせず教室を出ていってしまった。


後を追う気には到底なれない。


蒼空の耳にも噂は届いているんだろうか。


届いていたとして、蒼空には関係のない話か。


蒼空にとって私は赤の他人だから。


それも、やたら馴れ馴れしくしてくる変な他人。


1から関係を築き直すか、もう関わらないべきか。


きっと、後者が正解なんだろうな。


あの1年間の想い出に蓋をして、0からやり直すなんて苦しい。


そんなこと私にはできない。