「なんか、ごめんね!怪我してるのにこんなことに巻き込んで!校舎案内は私抜きでやって?」


立ち上がり、スカートについた汚れを払う。


「赤嶺く―」


彼の唇が私の唇に覆いかぶさった。


「…っ!」


咄嗟に、拒絶してしまった。


蒼空以外のキスを受け入れられなくて。


蒼空との想い出が上書きされてしまうのが怖くて。


「ごめん。でも…本気で奪っていい?アイツから、森下のこと」


嫌ではなかった。


赤嶺くんとのキスは、嫌じゃない。


「そうしてくれたらどんなに嬉しいか…。でも、今の私は…」


「わかってるよ。アイツが好きなんでしょ」


ただ、蒼空との想い出が消えるのが怖かっただけ。


「……うん」


だから私は、赤嶺くんとは付き合えない。


蒼空のことなんて忘れ去りたいのに、心がそれを拒否している。


「絶対、森下のことを振り向かせる」


「…うん。そうしてくれたら嬉しい」