チャイムが鳴り、皆が静かに席につく。


だけど廊下がいつもより騒がしい。


「なんだろう?」


隣の席の子が話しかけてくれたけど、私にもよくわからない。


「チャイム鳴ってんぞー!早く教室入れ!」


主任の先生が怒り、やっと廊下が静かになった。


そして、担任が入ってきた。


「起立」


学級委員の赤嶺くんが号令をかけたけど、先生がそれを制する。


「ちょっと待って。先に転入生を紹介する」


転入生…?


廊下が騒がしかったのはそのせいか。


「本当は始業式に間に合わせたかったんだが、いろんな事情が重なり今日になった。じゃあ桐谷(きりたに)、入っていいぞ」


桐谷と呼ばれた転入生が教室に入ってきた。


それはそれは、息を呑むほど美しい王子様のような人だった。


「え……?」


細身でスラッとしたスタイルに、白っぽい金髪、作り物のように綺麗な顔。


“おーい!そんなとこにいると危ねーぞー!”


あの夏のさざ波が聞こえてくる。


彼とのたった1年の想い出が次々と思い起こされる。


もう二度と、会うことができないと思っていた、彼だ。


「桐谷蒼空です。よろしくお願いします」


桐谷蒼空。


名字は変わっているけど、あの蒼空だ。