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「もうそろそろ完全下校の時間だ。つまんない話を長々聞いてくれてありがとう」


始業式が終わった昼間から夕方まで、私はずっと蒼空の話をしていたのか。


奏が聞きたいと言って始まった話だけど、本当は私が誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。


「花純にそんな過去があったんだ。…でも…素敵な人だったんだね、蒼空さんって」


奏が柔らかな口調で言った。


そう。


素敵な人だった。


私を変えてくれた人。


私に生きる意味を教えてくれた人。


そして、私が救えなかった人。


「今もまだ金髪を見かけると反応しちゃうくらいに、忘れられない」


いい加減、忘れなきゃいけないのに。


「結局、一度も連絡はつかず?」


「うん。生きてるのかすら分かんない」


「最愛の人が行方不明…か…」


「ま、そんなとこ。いい加減踏ん切りつけなきゃって思ってるんだけどね〜…」


カバンを持って奏と廊下を歩く。