そんなあぜ道を通りぬけると、だだっ広い畑が広がっていた。


「これ、全部森下さん家の敷地。だから遠慮なく入って大丈夫」


蒼空はそう言ってズカズカと畑を直進する。


この葉っぱ、なんの葉っぱだろう。


トマトかな?


「森下さーーん!花純連れてきた!」


おじいちゃんらしき人物は、公民の教科書でしか見たことがないような絵に描いた農家さんの格好をしている。


泥がついた白いタオルで顔をぬぐい、クシャっと笑いかけてくれた。


目じりのしわが優しい印象。


あんまり父には似ていない。


あの人はこんな風に優しい笑顔は見せたりしなかった。


「花純ちゃん、久しぶり。よく来てくれたね。遠かったでしょ」


「うん…」


お世辞にも”そんなことない”とは言えないほど遠かった。


でも、だからこそ私はこの場所を選んだ。


私を知るすべての人から逃れたくて…。