おじいちゃんは照れて目を泳がせている。


「この人、ここでプロポーズしてくれたの。流れ星を背に」


あの景色は死んでも忘れないわ。


おばあちゃんは、そう言っておじいちゃんの腕をとった。


それを見ていた蒼空が私の手を引き、2人とは少し離れた場所に移動する。


「あんな夫婦になりたいな」


蒼空の視線の先には、二人肩を寄せ合って星空を見上げているおじいちゃんおばあちゃんの姿。


「なろうね。何十年先も、一緒にいようね」


「うん。約束」


蒼空が小指を出した。


「約束だよ」


自分の小指を絡めて見つめ合う。


蒼空の色っぽい顔が近づいてきて、そっと目を閉じる。


唇に柔らかいものが触れた。


一瞬だった。


けど、永遠のように感じた。


「流れ星…何願う?」


蒼空がそう尋ねた瞬間、煌めく一筋の星が流れていった。


「蒼空の幸せ」


私の願いはそれしかない。


「蒼空が幸せに暮らせますようにって」


また、星が流れ落ちた。


次々と輝きを残しながら消えていく流星たち。


「蒼空は?」


まるで星のシャワー。


「秘密」


幻想的な光景に相応しくない震えた声。


視線を蒼空に移すと、彼は涙を流していた。


そして、泣き笑いして言った。


「叶ったときに教えてあげる」


流れ星とともに、蒼空の澄んだ瞳から涙が一筋流れて落ちた。







それが、私が見た最後の涙と笑顔だった。