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電車が終着駅に到着し、静かに停まった。


「さっ、どこ行きたい?」


さっきまでの涙は無かったことのように、明るく振る舞う蒼空。


1年前の私は、蒼空のこの屈託ない笑顔に救われた。


その裏に隠された苦しみに気づくこともなく。


蒼空の笑顔は、見ていて苦しい。


無理して笑っているのがバレバレだから。


でも、蒼空がそう振る舞うのなら、私がどんよりしているわけにもいかない。


「明日使う髪飾り、一緒に選んでくれない?」


「おっ、いーじゃん!ちょうど良い店知ってるよ。案内する!」


弾ける笑顔で私の手を引き、駅の近くの商店街に入る。


ファストフード、プチプラの洋服店、靴屋など、大衆向けのお店が集っている。


昔ながらの八百屋や駄菓子屋も残っていて、独特な雰囲気がある。


「花純の浴衣姿楽しみだな〜」


「私も、蒼空がオシャレしてくるの楽しみ」


去年の夏祭りの時のカッコよさが忘れられない。