綺麗な顔を歪ませて、重たい言葉を吐く。


吐き出された言葉は、行き場を失って地に落ちる。


パーーーッ


警笛を鳴らしながら電車が近づいてきて、目の前で停まった。


「…乗る?」


乗客は誰もいない。


それを確認した蒼空は、小さく頷いて車内へ移動する。


もう乗り慣れた一両編成の小さな電車。


運転席から一番遠い席に並んで座る。


「毎日毎日殴られて、殴られて、殴られて。俺、なんのために生きてんのかな。俺はアイツのサンドバッグ?」


「……」


「酒を飲むと狂ったように俺たちを殴り始める。母さん、俺、日和。泣き叫んでも暴れても止まらない。母さんは弱り切ってて、毎日夜な夜な泣いてる。でも俺は、何もできない」


「……」


「日和も、毎日毎日泣き叫んで、暴れて、抵抗してる。でも、小2が大人に敵うわけがない。痛い、助けて、やめて、痛い、苦しい、助けて、ごめんなさい、許して。日和の絶叫が夢に出てくる」


「……」


「俺は、日和が痛めつけられる度に庇って、俺が盾になってた。でもさ…っ。でも…っ」


何も、言えなかった。


抱き寄せることしかできなかった。