駅に着くと、もうすでに蒼空はベンチに座っていて、ボーッと青空を見上げていた。


今日は雲ひとつない快晴だ。


海を見下ろすと、水面がギラギラと眩い光を反射させている。


「蒼空」


隣に腰を下ろし、電車を待つ。


蒼空は今日も長袖だ。


「ごめんね、急に呼び出して。なんか急に会いたくなって」


目が合わない。


ボーッと水平線を眺め、時折指遊びをしている。


無理やり目を合わせても、フイ…と逸らされるだけ。


……変だ。


蒼空が自分都合で私を呼び出したことも、何のリアクションも返してくれないことも、目すら合わせてくれないことも。


おかしい。


何かあったに違いない。


「何があったの…?」


蒼空の手に私の手を重ね、ぎゅっと握りしめる。


1人じゃないよ、1人で抱え込まないで…。


「俺、もう嫌だ…」


蒼空が肩を震わせて声を漏らした。


「今すぐに、家から出たい…」