10分近く自転車で進むと、2階建ての大きな古民家が見えてきた。


「あれが森下さん家」


「すご…。広そうなお家だね」


「田舎の家なんてどこもあんな感じだよ」


「そうなの??」


おじいちゃんの家は木造建築の瓦屋根で、いかにも昔ながらの古民家。


「あれ、インターホンないの?」


「ない。森下さん常に家にいるからいらないんだよ。たぶん鍵も開いてんじゃないかな」


ボストンバッグを片手に持った蒼空が、ノックもせず玄関扉をスライドする。


「森下さーーん!花純ちゃん着いたー!」


家の中に叫びながら、家主の返事も待たぬままバッグを床に置く。


防犯緩くない…?大丈夫なのかな…?


「花純も入っていいよ。…って、俺の家じゃないけど」


笑って手招きする蒼空につられ、恐る恐る家の中に足を踏み入れる。