「森下さん!花純の浴衣姿見てよ!超可愛くない!?」


蒼空が大きな声で私を紹介する。


「ちょっと蒼空、やめてよ…」


隣から蒼空のお父さんがこちらを見ていることに気がついた。


ペコリと会釈すると、人当たりの良い爽やかな笑顔が返ってきた。


あの人が虐待…。


今屋台に並んでいる皆も誰も知らない裏の顔。


…こわい。


「花純ちゃん、だったよね?」


「へっ!?あっ、はい!」


突然背後から声をかけられ、素っ頓狂な声が出る。


振り返ると、髪の長い綺麗な女性が立っていた。


「いつもうちの蒼空がお世話になってるみたいで。ありがとうね」


蒼空のお母さんか…。


言われてみれば蒼空に少し似ている気がする。


背が高くてスタイルも良く、気品のある雰囲気を身に纏っている。


「こちらこそです。蒼空のおかげでこの学校に馴染めたので…」


こんな綺麗な人と話すと緊張しちゃう…。


目が笑っていない感じが少し怖いし…。


「蒼空が何かご迷惑かけたりしてない?」


「いえ、まったくです」


「そう。何か相談されたりは?」


…相談?


もしかして、探りを入れられてる…?


「期末テスト前は、勉強の相談に乗ったりしてました」


「そう。だから期末テストの成績が良かったのね。ありがとう」