「真中さんの両親は、その…知ってるの?」


一日中預けてるってことは、日和ちゃんについた痣とかも見てるよね…?


「どうだろ。紬の父さんが勤めてる会社の重要な取引先が俺の父親の会社で、父親はその重役だからさ。見て見ぬふりしてるかもね」

 
平然と言い放つ蒼空は、さも当たり前のことを話しているという様子で、まるで私が間違った感覚で生きてるんじゃないかと思わされるほどだった。


「まぁそれでも真中家にいるときの日和は楽しそうだから、全然いいんだけど」


「…そっか」


「まっ、花純は何も気にしなくていいよ。自分のことは自分でなんとかするからさ」


そうやって線を引かれると、私には何もできなくなる。


「31日、何時待ち合わせにする?てか俺が花純の家に迎えに行けばいっか」


蒼空は何事もなかったかのように普通に会話を続ける。


「いいの?」


蒼空にとって虐待は日常。


なんら特別なことじゃない。


その事実を痛感させられた。


「だって小学校の場所知らないでしょ?」


「うん」


いつか必ず、私が蒼空を救う。


何年かかるか分からないけど、絶対に救い出す。


「なら、6時に花純の家でいい?」


「うん!ありがとう!」


今できることは、蒼空のそばで笑っていること。


それが蒼空の力になるのなら、どんなときでも笑顔でいる。