人数が多くて良いことなんて1つもない。


敵が増えるだけ。


「学校内に顔も名前も知らない人がいるってことだろ?想像つかないなー」


「……どうだろう。意外と噂は回るもんだから」


しょうもない噂ほどよく回る。


私が好きな人を奪っただの、なんだの。


バカバカしい…。


「……もうすぐ俺の家。自転車取ってくるからここで待ってて。すぐ戻ってくる」


何かを察したように、声のトーンが変わった。


気を遣わせちゃったかな…。


蒼空がT字路を左に曲がり、遠くへ消えていく。


振り返ると、駅のオンボロ屋根が遥か遠くに見える。


「けっこう歩いたなぁ…」


今までこんなに歩いたことはなかったかも。


基本電車移動だし、駅から学校も家も近かったし…。