この話を聞き、蒼空がいかに壮絶な人生を送ってきたのか、身に沁みて感じた。


意識を失うまで殴られる、救ってくれた叔母さんの生活基盤が壊される、強引に連れ戻される。


安全を得られそうだったのに、やっぱりそれは無理で、結局地獄へ逆戻り…。


お父さんに連れ戻されたその日、蒼空はどれだけ絶望しただろう。


カフェが閉店したと知ったとき、蒼空はどんな思いを抱いただろう。


罪悪感、無力感、絶望感。


まだ小6で、世界の醜さを痛感させられた。


“俺には価値がない”


そう言った蒼空の気持ちが、今なら痛いほど理解できる。


「今日はありがとう。楽しかった」


わざわざ家まで送ってくれた蒼空。


もし私が蒼空なら、こんなふうに人に優しくできる自信はない。


「蒼空」


「ん?」


ぎゅっ…



「花純?」


ずっとこうしたかった。


カフェで話を聞いたときからずっと、蒼空のことを抱き締めたかった。


「どしたの」


蒼空の手が私の髪に触れた。


優しく撫でてくれるのに呼応して、ぎゅっと強く抱きしめる。


「俺のこと心配してくれてる?」