「君の母は……美那子はね。『アミロイドーシス』という難病を患っている。それも局所的、心臓にばかり症状があらわれる、ね。特異なものだ。平均寿命は――」

「ちょ、ちょっと待ってください…!」

 私は大声で一さんの言葉を制した。
 声を上げられずにはいられなかった。

「難病……? 心臓……? そんなこと、今まで一言も――」

「ああ。言わないようにって、僕と美那子で決めたことだ。涼子さんにも口止めしてある。それこそが、僕らが今一緒に住んでいないことの、何よりの理由なんだよ」

「ど、どういうことですか?」

 頭がぐちゃぐちゃになったままだけれど、私は一さんの言葉に耳を貸す。

「長い話になるけれど――」

 そう前置いて、私が頷くのを確認すると、一さんは訥々と語り始めた。
 それは母の胎内に、私、そして陽向くんの命が確認されてから、まだ程ない頃の話。