「……」

 ララちゃんはリップを塗る手を止めて無表情で私を見ている。

 そしてなにも言わず、ふいっと視線を鏡に戻して化粧直しに戻った。


 ……気まずい……。

 何か話しかけることも出来ず、ララちゃんからひとつあけた隣の洗面所で、手を洗う。


「いつからー?」

 唐突にララちゃんが聞いた。

「え……?」

「いつから付き合い始めたのー」

「えっ…と…」

 心なしか冷たいララちゃんの空気に、緊張で手足が急激に冷えていく。

「三週間前から……お試しで……」

「は?お試しってなに?」

「……1カ月お試しで付き合ってみようっていう、話で……」

「えーなにそれー」

 ララちゃんがクスクスと笑ってポーチを閉めた。

「……じゃあ返してよ」

 突然低くなった声にララちゃんを見ると、さっきの笑顔と打って変わって、泣きそうな顔をしていた。