劇場に入ると、大成くんたちと別れて自分たちの座席に座った。

 大画面のスクリーンでは映画の予告が流れている。


「あ。これも小説が原作だよね」

 
 スクリーンを見つめる依澄くんはとても普通で、相変わらず芸術的にきれいな横顔をしてる。


「……そうだね」

 
 もうすぐ、お試しで付き合い始めて三週間。 あと1週間もすればお試し期間は終わりになる。

 この三週間で依澄くんのことをたくさん知れたと思う。
 
 でも……


『チームメイトの彼女を寝取ったんだって』

『女の子と遊ぶためにサッカー部辞めた、とか』


 まだまだ私の知らない依澄くんがいる。


『好きです。好きです、好きです』
 

 …ララちゃんにも同じように告白したのかな。

 さっきのララちゃんの表情が脳裏に焼き付いて離れない。

 ララちゃん、明るくてオシャレで可愛くて……依澄くんとお似合いだった。

 二人はどうして別れたんだろう。