「……」

 働かない頭で、確かにお得だな、なんて思う。

「お願いします、先輩」

 呆然とする私の手を依澄くんが両手で包む。

「それで無理だったら諦めるから。先輩の1カ月、俺にちょうだい」
 
 しっかりと私の目を見てそう言った依澄くんの表情が、あまりにも真剣だから

 とても嘘を言ってるようには見えなかった。

 ここまで言われたら、もう断る理由なんて思いつかない。
 

「は……はい……」


 私が小さく頷くと、


「っ……、」


 依澄くんが顔を俯かせてため息をついた。

 えっ、あれ? ため息……?


「……先輩。先に謝っときます」


 もう一度顔を上げた依澄くんの目は、据わっている。
 

「あんまり可愛いことされたら俺、我慢できないんで。よろしくお願いします」

「……?わ、わかった」


 なにをよろしくされたのかよく分からなかったけど、私は依澄くんの目を見てしっかりと頷いた。