ジュリアスは軽く早歩きしている程度なんだけど、手を繋がれたままの私はそれに着いて行くために小走りをしなければならない。

「ええ……エセルバード様はああして一度怒りを露わにしてしまうと、なかなかそれを抑えられないのです。それは、彼自身の持って産まれた性質で、それを抑えるようになるための訓練には多くの努力が必要だったはずでしたが……」

 もしかしたら、亡き王妃……エセルバードの母親から、ジュリアスは遺された息子のことを頼まれていたのかもしれない。

 ジュリアスは任されていたはずのエセルバードを、上手く導けなかった自分を責めているんだ。

「ねえ……ジュリアス。貴方は、司祭を殺してなかったの?」

 彼はその時に立ち止まり、真剣な表情で私の方を振り向いて首を横に振った。

「それはここでは口にしては、いけません。詳しく話しますので、聖女様のテントへと向かいましょう」


◇◆◇


 何かを迷っている様子のジュリアスは私のテントに着いても、なかなか口を開こうとはしなかった。

 私はそんな彼を、急かすようなことはするべきではないと感じていた。