「その男は汚れた英雄だぞ!」

「だから、何なのよ! 別にジュリアスの評判と、結婚する訳でもないでしょ!」

 私は鼻息荒く言葉の通じない三歳児と喧嘩していた。その時に、エセルバードは整った顔をひどく歪ませたので、少し怖くなった。

 ……え。この人、本当にヤバくない?

 彼の青い目の中に、底知れぬ狂気が見えて私は反射的にジュリアスの後ろに下がった。

「なんだよ……お前……そうか、何故その男の肩を持つのか、わかった。知っているんだろう。ジュリアスが俺を庇ったことを、知っているんだろう?」

「……殿下」

 今まで黙っていたジュリアスは彼の錯乱した様子を見かねてか、エセルバードへ呼びかけた。

 けどそんなことは関係ないとばかりに、エセルバードは大きな声で叫んだ。

「うるさいうるさい。たかが、町娘を一人孕ませたからと……俺は王族だぞ! それを、あの司祭がしゃしゃり出て来たんだ。ジュリアス……お前は王から俺を庇うように指示されてどんな気持ちだった? 母上を父上に取られ、その息子のために殺人の罪まで着せられることになった……俺は可哀想だと思ったよ!」

 ……え?