「失礼ですが、エセルバード殿下。聖女様が断られれば、そのご要望は受け入れられません。何もかも規則で定められているはずです……異世界から喚んだ聖女の今後は、彼女の選択によると。残って貰うことは、誰も強制出来ぬのだと」

「はっ……何が無理強い出来ぬだ。お前のように色仕掛けをすれば良いではないか。その聖女様はお前恋しさに、この世界に残る……だとすれば、お前には得しかないな?」

 嫌みっぽく言ったエセルバードに、ジュリアスは絶対零度の氷の視線を向けた。この馬鹿な生き物をどう調理してやろうかという、冷徹な料理人にも見える。

「もう……いい加減にして! ジュリアスはそんなことしていないわ!」

 私は不毛に続く二人の言い合いに我慢出来なくて、無理矢理口を挟んだ。だって、こんなの堂々巡りで……一生、終わらなくない?

「何が色仕掛けをしてないだ。お前だって、この男と一緒に居たいと思ったのではないか?」

「それって、全部私の自発的なやつです! 私の世界にはこんなに素敵な人……血眼になって探したら居るかも知れないけど、絶滅危惧種並みに出会うの難しいの! 絶対逃したくないって思って当然です!」