「なあ、どっかで二人でクリパしようぜ。栞の持ってるそれ、ケーキだよな? ……あー、ごめん。誰かと食べる予定なら全然いいんだけど」

 気まずげに奏がわたしの方をチラッと見る。

「いないよ、そんな人。大学で、なかなか友だちもできなくて。結構困ってたんだよね、こんな大きなケーキもらっちゃって」

「そっか」

 奏の声に、安堵の色が浮かぶ。

「じゃあ、いい場所知ってるからさ。ちょっと寒いかもだけど、そこ行かね? あ、俺んちじゃねえから、心配すんなよな。さすがに、それは……だし」

 奏が口の中でもごもごと言葉を濁す。

「うん。まだこの街のこと、よく知らないし。いい場所知ってるなら、教えて」