雨宿りならぬ雪宿りをしながらする、奏との一年半ぶりの会話。

 もっとぎこちない感じになるかと思ったけど、当時にタイムスリップしたみたいに、あの頃と全然変わらない。


「そうそう。残り物の総菜がもらえるの目当てでここで働くようになって、もうすぐ一年ってとこかな」


 総菜コーナーで働く奏と、レジ係のわたし。

 半年以上同じお店で働いていて、今日まで会わなかったなんて、逆に奇跡なんじゃないかって思う。

 まあ、奏は日中、わたしは大学の講義が終わった夕方から閉店まで。シフトがあまりかぶっていなかったせいもあるんだろうけど。

 家族との時間を優先したいっていうパートさんと、今日限定で奏がシフトを替わってあげたんだって。


「そうなんだ。じゃあ、わたしの先輩だね」

「そうだぞ。先輩には敬いの心を持って接することが大事なんだからな」

 胸の前で腕を組んで、エラそうに奏が言う。

「なに言ってるの。所詮奏じゃん!」

「所詮て。おまえなあ」

 ケラケラ笑うわたしの声と、苦笑いする奏の声が混ざり合う。


 ああ、懐かしい。そうそう、この感じ。

 新しい大学に入学して、半年ちょっと。

 まだここまで気を許せる友だちはいない。

 だから本当に久しぶり、この感じ。