「しまったなぁ」

 予想以上の大雪に、わたしは出入口で立ち尽くした。


『今年は、ホワイトクリスマスが期待できるでしょう』って前々から天気予報で散々言っていたのに、結局傘を持ってくるの、忘れちゃった。

 わたしの横を、いつもより笑顔のパートさんたちが、どんどん通りすぎていく。

 きっと家に帰ったら、家族そろってクリスマスパーティーをするんだろうな。

 笑顔溢れる食卓を想像して、小さなため息が漏れる。


 そんなわたしは、クリぼっち。

 今までは一緒に過ごす家族がいたけれど、上京して初めて迎えた一人ぼっちのクリスマスイブ。

 駆け込みでカップルが増えるという謎現象も、今ならうなずける気がする。


「うわっ。なんだ、これ」


 さっきフライドチキンの山の方から聞こえてきた歓喜の声と同じ声が、すぐ横でする。

 チラッと隣を見ると、わたしの目線の高さに肩が見え、そっと見上げると、わたしと同じくらいの歳の男子が——。


「……って、ひょっとして、(そう)!?」