運命なんて信じない。


「今日僕は、運命的な出会いを果たしました」


 そんな前置きではじまった、ボーカルコンテストの審査結果発表。

 あとで知ったんだけど、最初から彼女が優勝することは決まっていたらしい。


 なにそれ?

 あんなに必死に練習した時間も、緊張で眠れなかった時間も、全部全部……返してよ。


 運命なんて、所詮勝ち組のためだけに作られたもので。

 わたしみたいな普通の子には、夢を見る権利すら存在しない。


 それが現実。


 だからわたしは、もう夢を見るのはやめた。

 だって、わたしにはムリだってわかったから。

 同じ思いなんか、もう二度としたくないから。